Jユースをも凌駕する強さ! 青森山田はなぜ過去2例しかないプレミア開幕6連勝を達成できたのか?

Jユースをも凌駕する強さ! 青森山田はなぜ過去2例しかないプレミア開幕6連勝を達成できたのか?

2021.5.18 ・ 海外サッカー

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 青森山田の勢いが止まらない。高校サッカー選手権では2年連続で準優勝に終わったが、今季はU-18高円宮杯プレミアリーグEAST開幕から6戦全勝で総得失点も23得点・1失点。圧倒的な結果で“青森の常勝軍団”が首位を快走している。


 過去に開幕6連勝を飾ったチームは、リーグ初年度となる2011年のサンフレッチェ広島ユース(所属リーグWEST /8連勝)、2018年の鹿島アントラーズユース(所属リーグEAST /6連勝)しかない。青森山田にとっても過去最高記録は2015年の3連勝。リーグ戦を制して日本一に輝いた2016年、2019年も2連勝止まりで、開幕6試合でそれぞれ4勝1分1敗と4勝2分の好成績を収めたとはいえ、タレントを擁していたとしても6連勝は成し遂げられなかった。


 では、なぜ青森山田はチーム記録となる6連勝を収められたのだろうか。


 チームのスタイルは今までと何も変わらない。

 「青森山田のサッカーは何かに特化したものではない。逆にいえば掴みどころがなく、どんなところからでも戦えるのが特徴。全てのスキルにおいて相手を上回り、なんでもできるサッカーというのを志向している」


 黒田剛監督が明かす通り、ボールの支配もできれば、堅守速攻のシンプルなスタイルで戦うこともできる。相手や時間帯を見ながら、様々な戦い方をする青森山田のベースは例年通りだ。


 ただ、その中で今季のチームは攻撃陣にタレントを擁しており、彼らを生かすためにシステムを4-1-4-1から4-4-2に変更。特に中盤と前線の選手はほとんど昨季からゲームに絡んでおり、個の力も経験値も他の追随を許さない。


 プロ注目のMF松木玖生(3年)、MF宇野禅斗(3年)が組むダブルボランチは抜群の強度を誇り、関係性も抜群。攻撃時は松木が前方に位置取り、宇野が後ろでバランスを取る。距離感は絶妙で、チームの心臓として攻守で存在感を示している。脇を固める選手も個性派揃いで、右サイドのMF藤森颯太(3年)はドリブル、FW名須川真光(3年)は決定力でチームの勝利に貢献。昨季からレギュラーを張る面々に加え、FW渡邊星来、MF田澤夢積(いずれも3年)も日を追うごとに逞しさを増している。

  5月16日のプレミアリーグEASTの6節・流経大柏戦は主軸組と新戦力の活躍により、高体連の強豪校対決を制した。


 前半の中盤以降は流経大柏のハイプレスに苦戦してスコアレスで折り返したものの、後半はバラエティに富んだ攻撃パターンで相手を圧倒。49分に藤森の右クロスから田澤がDFに競り勝って先制点を奪えば、64分には藤森のパスに抜け出した渡邊がGKに倒されてPKを獲得。これを松木が冷静に決め、さらにリードを広げた。2−0としてからも手を緩めず、80分には松木が左CKからCB丸山大和(3年)の得点をお膳立て。磐石の試合運びで3−0で勝利を挙げ、勝点3を積み上げた。1試合平均3.8得点の攻撃の破壊力は凄まじい。4試合で4失点だった流経大柏でも止められなかった。


 攻撃陣の躍動が目立つ一方で、守備陣の奮起も忘れてはいけない。今季のチームはGKと最終ラインを昨季から総入れ替え。新たにレギュラーとなったGK沼田晃季、左SB大戸太陽、CB三輪椋平(いずれも3年)、CB丸山、右SB多久島良紀(2年)は経験値に乏しく、タレント揃いの攻撃陣に比べれば少なからず不安があった。シーズン前のフェスティバルでもキャプテンの松木が「最終ラインも総入れ替えで難しい状況」と話すほどで、チームが優勝を目指すためには彼らの奮起が不可欠だった。

  しかし、そんな心配をよそに守備陣は抜群の安定感を見せ、6試合中5試合で完封。青森山田らしく空中戦で競り勝ち、球際でも相手を圧倒している。毎週のように高校年代トップレベルの相手と戦うことで成長しており、松木も守備陣の出来に手応えを感じているという。


「今、一番成長しているのは4バックとGK。守備に対してかなり献身的にプレーし、GKの沼田も徐々にコンディションを上げている。椋平と大和もリーダーシップを持ってやってくれているので、信頼して任せられていると思います」


 充実の一途を辿る青森山田。攻守で相手を圧倒しているが、それだけでは6連勝は達成できない。相手も警戒し、どのチームも“打倒・青森山田”を掲げて向かってくる。なぜ、それでも勝ち切れているのか。それは勝者のメンタリティを持っているからだ。黒田監督は言う。


「プレミアリーグにおいて、5年連続で優勝争いをしている先輩たちの功績を見た上で彼らは育ってきた。逆に優勝を目指さない者はここに来ていないし、絶対王者としての強さを持たないといけない」

  指揮官の言葉を裏付けたのが、6節の流経大柏戦だ。その試合の週に黒田監督は選手たちに対し、「青森山田の戦い方に対して警戒をしてくる。6節目から新しい青森山田を再構築しよう」と投げ掛けたという。指揮官は「全てのスキルに対して、体力もシュートも、全てにおいてレベルアップしていかないといけない」とチームにより高いレベルを求める中で、選手たちはしっかりと勝ち切った。さらに選手たちは流経大柏戦の結果に誰もが満足せず、向上心を絶やさない。1得点・1アシストの松木は出来を「60点ぐらい」と言い切り、好プレーを見せた宇野も「自分としてはまだまだ」と自らを戒めたほどだ。

  どんなに勝利を積み重ねたとしても、常に向上心を持って前に進む。そのメンタリティは過去の先輩たちと比べてもトップクラス。だからこそ、攻守両面が機能し、最高のスタートを切ったのだろう。


 目標はプレミアリーグ、インターハイ、高校サッカー選手権を全て制し、1998年度の東福岡以来の高校年代3冠を達成すること。本山雅志らを擁した当時の東福岡は52戦無敗でシーズンを終えたが、青森山田は果たして――。「彼らは全て勝つつもりだし、全てのタイトルを取るつもり」(黒田監督)。この言葉を現実にするべく、チームは慢心せずに全力で走り続ける。


取材・文●松尾祐希(フリーライター)

記事提供:サッカーダイジェストWEB

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