GK中継チャンネルで明らかになった、西川周作と林彰洋の異なるスタイル

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第40回

GK中継チャンネルで明らかになった、西川周作と林彰洋の異なるスタイル

By 清水 英斗 ・ 2017.4.19

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J1第7節のFC東京対浦和レッズで、NHKがトライしたGK中継チャンネルは、期待以上におもしろかった。専用カメラが90分間、GKをストーキングする。そんな斬新すぎる企画がうまくいったのは、いくつかの理由があるだろう。


ひとつは、副音声的なサブ中継に徹したことだ。


メイン中継は別のチャンネルがやっているので、GKチャンネルでは、試合中に尺を取ってタッチペン付きの解説を行ったり、長めのGKリプレイをたくさん挟んだりと、チャンネル独自のGK情報を惜しみなく詰め込んでいた。試合の流れは断ち切られてしまうが、あえて割り切り、サブ中継の個性を出している。この点が良かった。中継スタッフの成功だ。


また、画面は分割されており、GKカメラと並ぶ主画面にはピッチの縦映像が使われたが、これも良かった。横映像に比べると試合の流れがわかりづらいが、DFのポジショニングを含めてゴールに関わるプレーが見やすい。この視点も良かった。


さらに画面右下に表示したツイッターの投稿を、実況と解説がニコ生のように拾っていた。GK専用カメラは、ボールに絡んでいないGKを映す時間がほとんどなので、ダラダラと長せば、ピンポイントでは面白くても、全体の退屈感は否めないだろう。しかし、中継では視聴者とキャッチボールをしたので参加感があり、90分間を長くは感じず、あっという間に終わった感覚があった。さまざまな面で、サブ中継に徹したことが功を奏した。


プレースタイルの異なる、日本代表のGK対決


もうひとつ良かったのは、対戦カードのチョイスだ。


FC東京の林彰洋と浦和の西川周作は、2人共に日本代表なので知名度が高いのは言うまでもないが、それ以上に、GKとしてのプレースタイルが大きく異なる。そこに、元日本代表GKの小島伸幸さんがわかりやすく解説を入れるので、GKの見方がどんどん広がる。


たとえば、西川が印象的だったのは、立ち方だ。実況から本人のコメントが紹介されたが、両足を横にそろえず、片足を前に出して、移動している。


西川のプレースタイルは積極的に高い位置を取って、ポゼッションに絡み、ディフェンスラインの裏をカバーするため、前後に動くスピードが求められる。これが遅いと、カウンターやロングシュートに対応できない。


その点で、西川は片足をずらして立つことで、前後への一歩目をスムーズに出す。実際、GKカメラを見ていると、林の姿勢は正面に見えることが多いが、西川の姿勢は斜めに見えることが多かった。特に守備に切り替わるときは、西川は斜めどころか、ほぼ横向きになり、前後のステップのスピードを上げている。もちろん、シュートストップで構える場面などは両足をそろえるが、裏への対応が必要なときは、ボールを見ながら下がりやすい姿勢にした。このような姿勢の作り方は、DFの1対1と似ている。


西川のフィードやビルドアップのうまさ、高い位置へ出てスペースをカバーすることは知られていたが、そのスタイルを支える立ち方などの細かいポイントがGKチャンネルで伝えられていた。


守備時にアグレッシブさを発揮する林


一方、林について印象的だったのは、クロスに対するポジショニングだ。


たとえば前半30分のシーン。林は浦和の左サイドからのクロスをキャッチした。このとき林は、ボールとゴールの中心を結ぶ線上、つまり基本とされるポジションに立っていない。ニアを空けてゴールから離れ、クロスに対して出やすいポジションを取った。結果的に林はクロスを真正面で難なくキャッチしたが、それは最初から移動していたからだ。


相手のボールの状況から、直接シュートを打たれる脅威は小さい。林はアグレッシブに、より危険なプレーを防ぐことを優先した。欧州ではこのようなポジションを取るGKが多いと聞いたことがあるが、林も同じ基準でプレーしている。


また、サイドを突破されたとき、林はかなりニアサイドへ出て、グラウンダーの折り返しに飛び込んでくる相手に注意を払っていた。ここまでニアに出ると、ファーサイドへクロスを上げられたときに無防備になるが、林は195センチと長身なので、高いボールにも届きやすい。逆にそれを越えるボールは、滞空時間が長くなるので、味方DFに対応させる。長身を生かして、より多くのクロスを積極的に防ごうとするプレーも印象的だった。


林は後半24分のフリーキックでも、柏木のクロスに対して、果敢に前に出てキャッチを試みた。ボールをつかんだものの、飛び込んでくる相手と接触し、オフェンスファールになっている。アグレッシブに出て、相手がシュートを打つ前に未然に防ぐプレーが、林には多く見られた。


逆に西川は、後半10分のほぼ同じようなフリーキックの場面で、前に出ず、ゴールライン上のポジションをキープしている。その結果、クロスがゴールポストを直撃した。ゴール前でGKが存在感を出すという意味では、林のほうが上手だった。


日本代表のスタイルに合致するのは?


2人共にアグレッシブなGKだが、その意味合いはまったく違う。西川はポゼッション時、つまり攻撃時にアグレッシブなプレーをするが、逆に林は被ポゼッション時、守備時にアグレッシブなプレーをする。ここで挙げたのはポイントの一部分でしかないが、西川の良さ、林の良さが、それぞれよくわかる中継だった。


……と振り返ると、日本代表には林のほうが相性は良さそうだ。


ハリルジャパンに限らず、過去の日本代表でも、GKを使って積極的にビルドアップするケースはほとんどなかった。ハイプレスをかけられたら、それを剥がすチャレンジはせず、蹴り出している。


西川の良さは日本代表ではロスされてしまうし、過去のコメントから推測するに、ハリルホジッチはゴール前でアグレッシブにボールに行ける林タイプが好みに思える。ロシアワールドカップに向けて、日本代表の上積みをいちばん期待できるのは、林ではないか。


唯一、アギーレジャパンなら西川の良さが生きる雰囲気はあったが、いまさら言っても後の祭り。もちろん、先のことはわからないので、ハリルホジッチ後の監督が西川スタイルを重宝するかもしれないが。


兎にも角にも、あれこれとGKの視点を広げてくれる、良い中継だった。同じ中継のやり方で、ストライカー、監督、審判と、いろいろ応用できるのではないだろうか。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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