E-1選手権で優勝したなでしこ。東京五輪のメンバー入りに向け、選手の序列はどう変わった?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第51回

E-1選手権で優勝したなでしこ。東京五輪のメンバー入りに向け、選手の序列はどう変わった?

By 河治良幸 ・ 2019.12.18

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高倉麻子監督が率いる”なでしこジャパン”は、釜山で行われた『EAFF E-1選手権』でチャイニーズ・タイペイ、中国、韓国を相手に3連勝を飾り、4大会ぶり3度目の優勝を果たした。


高倉監督は優勝を決めた韓国戦の後に、「アジアカップ、アジア大会と(タイトルを)取ってますけど、今回のE-1優勝はやたら嬉しかった」と振り返った。今年6月に挑んだW杯では、ベスト16でオランダに敗れて大会を後にしており、「悔しさがチームの根底にあるので、今日の試合も我慢しながらではありますけど、勝ちきるチームになりつつあるということは大きな自信になります。まだこれで終わりじゃないですけど、いい節目だった」と感慨深げに語っていた。


高倉監督は就任以降、大きな世代交代を求められた中で、地道にチームを強化してきた。”高倉ジャパン”にとって、今回のE-1選手権は東京五輪を前にした最後の公式大会という意味で大事な節目であり、18人という狭き門の五輪最終メンバーを争う、アピール合戦の節目でもあった。


五輪メンバー、18人は誰になる?


E-1選手権は国際Aマッチデーではないため、2019年のアジアMVPでもあるキャプテンの熊谷紗希(リヨン)を招集することができなかった。その状況で見事にタイトルを獲得したわけだが、土光真代(日テレ・ベレーザ)が初戦の後に太もも裏のけがで離脱し、韓国戦を前に長谷川唯(日テレ・ベレーザ)、岩渕真奈(INAC神戸レオネッサ)という攻撃の”二枚看板”が離脱する事態に陥った。


「誰か一人選手がいなくなって、崩れるチームにはしないつもり」と高倉監督は強調するが、W杯よりも5人少ない18人で戦う五輪について「より選手のユーティリティ性は必要」と語るように、過酷な環境が予想される本番に向けて、万全の体制を整えていく必要に迫られそうだ。


GKは怪我などがない限り、守護神の山下杏也加(日テレ・ベレーザ)と池田咲紀子(浦和レッズ・レディース)の二人が確定的。ただし、E-1では出番のなかった平尾知佳(アルビレックス新潟レディース)、11月の南アフリカ戦に招集された浅野菜摘(ちふれASエルフィン狭山)、武仲麗依(INAC神戸レオネッサ)あたりにも逆転の余地はあるが、国際大会での信頼を考えると、可能性はわずかかもしれない。


E-1で大会MVPを獲得したCB南


守備のリーダー・熊谷を欠くセンターバックの中でアピールしたのは、3試合にフル出場し、無失点で終える立役者となった南萌華(浦和レッズ・レディース)だ。大会MVPにも輝いた南は「今回は特にラインコントロールは重視して取り組めた」と語る通り、持ち前の対人能力だけでなく、統率力でも成長を示した。


全体的に安定感が光った中で、ロングボールの処理やビルドアップに課題が見られたが「(熊谷)サキさんがいない分、今まで見えなかった課題がさらに見えた」と前向きに捉えており、今後の代表で熊谷と組んだ時にも「変わったねと思ってもらえるプレーができれば」と、自信を深めている。


その南にとって強力なライバルになりうる土光の離脱は残念だったが、三宅史織(INAC神戸レオネッサ)も再三のカバーリングでチームのピンチを救うなど、高い機動力と予測力を発揮した。165cmというサイズ以上に空中戦に強く、本大会まで”熊谷の相棒”を南と争って行くことになりそうだ。もちろん東京五輪でも、熊谷を欠く試合では南と三宅が組む可能性が高いが、土光の巻き返しにも期待したい。


サイドバックは若手中心?


W杯のように登録が23人ならば、本職のセンターバックだけで4人を揃えられるが、18人の五輪ではセンターバックとサイドバックを兼任できる選手を加える必要が出てくる。経験豊富な鮫島彩(INAC神戸レオネッサ)も外しがたいが、高倉監督としては、怪我のリスクなども考えて若手を優先したいだろう。三宅もサイドバックでプレー可能だが、ボランチもこなせる松原有沙は、両ポジションで貴重な戦力になれることをE-1で証明した。


サイドバックは本職の清水梨紗が右の一番手と見られるが、E-1での出場は中国戦の1試合のみ。チャイニーズ・タイペイ戦ではFW出身の清家貴子、韓国戦は宮川麻都が担った。左サイドバックは中国戦で宮川、チャイニーズ・タイペイ戦と韓国戦で19歳の遠藤純が起用されており、自陣のビルドアップに課題を残しながらも、縦に向かうパスやドリブルで存在感を見せた。


左右両サイドをこなせる宮川と、MFが本職で左利きの遠藤。さらに清家というユーティリティーな3人が評価を高め、センターバックとの兼任で三宅がいることを考えると、女子W杯で同ポジションの主力を担った清水であっても、18人のメンバー入りに予断は許さない。


ボランチの杉田と三浦は当確か


ボランチは女子W杯のメンバーであり、10月のカナダ戦、11月の南アフリカ戦、そしてE-1の3試合と継続的に起用されている杉田妃和と三浦成美の二人は限りなく”当確”に近い。まだDFラインからパスを受けた後の組み立て、展開力に課題はあるものの、なでしこ特有の崩しやタイミングを見た飛び出し、攻守のバランスなど着実に成長は見せており、二人がボランチのファーストセットとして有力だ。


中盤からの展開力を考えれば、阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)の存在は欠かせないが、右膝の怪我により、メンバー入りした女子W杯では出場が叶わず、その後も不在が続いている。現状を踏まえると、東京五輪の候補には推し難い。杉田と三浦を軸に、チャイニーズ・タイペイ戦で松原とボランチのコンビを組んだ栗島朱里(浦和レッズ・レディース)が、高倉監督にどれだけアピールできたか。また、16日にフライブルクからの退団が発表され、日本復帰が噂されている猶本光も候補のひとりだろう。


サイドハーフも、左右のポジションやFW、サイドバックなど複数のポジションをこなせることが選出の条件になりそうだ。なかでも長谷川唯、韓国戦でキャプテンマークを巻いた中島依美の二人はほぼ当確で、FWとの兼任で籾木結花、攻撃的なポジションでスタメンもジョーカーもこなせる小林里歌子の重要性はさらに高まった感がある。


E-1でアピールした池尻


もう一人、E-1で大きくアピールしたのが、韓国でプレーする池尻茉由(水原WFC)。右サイドでも2トップでも積極的な仕掛け見せるアタッカーは、なでしこに足りない、パワーを加えられる存在だ。E-1でも見られたように、試合中にポジションチェンジできるのは1つの強みと言える。ただし、コンビネーションの部分で課題が多く、最終メンバー入りを果たすには、残り半年の中で予定される国内キャンプなどに、どれだけ参加できるかもポイントになりそうだ。


2トップは今回、怪我で韓国戦を前に離脱したものの、2試合5得点で大会得点王に輝いた岩渕真奈が絶対的なエースであり、怪我で不参加だった菅澤優衣香(浦和レッズ・レディース)も、これまでの起用法やタイプを考えれば欠かせない。さらに籾木も”10番タイプ”として、2トップの一角でプレー可能だ。小林や池尻などサイドの選手を前線で起用することもできる中で、残る本職のFWは1枠だろう。


E-1では、20歳の植木里子(日テレ・ベレーザ)が女子W杯の離脱に続き、招集されながらも辞退。上野真実(愛媛FCレディース)は、E-1の3試合ともに途中出場したものの、ゴールという目に見える結果を残すことはできなかった。


そして、4年連続なでしこリーグ得点王として期待を背負う田中美南も、岩渕不在の韓国戦で不発に終わり、高倉監督も国際舞台のインテンシティーで決定力を発揮できない課題を指摘した。


チームの熟成を図る高倉監督も、ベースの部分でこれ以上ラージグループを広げたくはなさそうだが、FWだけは女子W杯以降に招集されていない選手にも”ワンチャン”が残されているかもしれない。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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